第28回 村岡ダブルフル88km部門その③

 ~完結編・自分自身に負けました~
 走行距離は30kmを超え、いよいよ村岡ダブルフルの難所・蘇武岳へと向かいます。

 その蘇武岳への登り口付近、村岡高校の生徒達がソーラン節で応援をしてくれています。そんな彼らに交じって、トラックの荷台からカメラを構える男が一人、そしてその横でこちらに暑いエールを送る男が一人。私はあの二人を知っている! そう、蘇武岳に上る前には絶対に会わなければいけないこの二人を!!

 げええーーー!! シュピさんとKATSUさんやないかーーーー!!!


 いやぁ、本当に毎年ありがとうございます。蘇武に向かう前にこの二人に会えたら元気が湧いてくるんですよねぇ(その後、リタイヤしちゃいましたが……)

 なぜか高校生達に交じってソーラン節を踊る私。
 う~む、変質者にしか見えない……。
 そんな感じで戯れは程々に、少しKATSUさんと一緒に会話をしながら登り坂を歩いて進みます。

「今年は大丈夫ですわ。蘇武ものんびり進んで行きますから~」
 そんなことを言っていたような……。でもこの時は本当に大丈夫と思っていたんですよねぇ。脚は重いが時間には余裕あり。蘇武の上りは無理はせず、ほぼ歩いて進んで行く作戦だったので、例年のようにゲゲゲにはならないだろうと思っていたんですよねぇ。
 しかし実際はすぐに体調が激変します(苦笑)
 KATSUさんと別れてから少し走りましたが、急な上りが続くので歩きに切り替え。周りも歩く人が多く、余力を残しておこうという作戦なんでしょうね。
 とぼとぼと歩いて進み、次のエイド・耀山に到着。

 ここはサンドイッチが出るのですが、時間帯が決まっていて、残念ながら自分が到着した時にはサンドイッチはまだ準備中。という訳であんぱんを頂きました。水分は市原付近の自販機で購入したミルクティーで摂取。

 さて、耀山を出発し、いよいよ蘇武岳の真骨頂・急坂が蘇武展望台まで続きます。距離にして7km程の急坂が続きます。走れるところは走り、後は歩いて進むという作戦で進んで行きます。てくてくと歩いて行く自分をガンガン走って抜いて行くランナーももちろんいます。でもそうしたランナーの大半が100kmか51kmのランナー。51kmのランナーはまだスタートして10km未満なので元気なので走るのも納得。しかし100kmランナーは遅くても走り続けています。う~む、やはり100kmランナーは強者が多いですね。
 そんな走るランナー達に触発されて自分も走る……なんてことはせず、こちらはマイペースを順守して進んで行きます。

 やがて次のエイド・36km地点の耀山牧場に到着。ここでは梨を頂きましたが、これが抜群に美味しかったですね~。瑞々しさはもちろんのこと、甘味がたまらん! これでまた次のエイドまで頑張れそうです!!
 ……と思ってたんですが、実はこのエイドに到着した頃には少し吐き気を感じていました。走り出すと一気に込み上げてくる感じだったので、無理はせずに歩き続けました。かなりペースを落として歩いていたので、何とか吐かずに進むことができました。
 吐かずに済むのは良いのですが、こうなると走れない。走ると一気に吐いてしまう。それが怖くて歩き続けます。かなりペースを落としているので他に歩いているランナーにもガンガン抜かれていきます。ただ焦る必要はないですね。
 時間はまだ大丈夫。マイペースで進んで行けば良いだけ。
 やがて吐き気もおさまり、下りに入ればまた走れるはず。
 そう自分に言い聞かせながら進んでいたんですが、38kmの距離表示が見えた瞬間、しょうもないことを考えてしまいました。
「残り50kmか……。もしこのまま吐き気がおさまらなかったら……」


 無理やん。


 はい、心が折れました。
 雑魚です。ガラスの心です。
 こうなるともう止める理由を考えてばかりなんですよ。
「無理をして進んで倒れたら迷惑を掛けてしまう。吐かない内に止めよう」
 そうだ、そうしよう。
 こうして早々にリタイヤすることを決めてしまいました。
 とは言えまだ吐いてはいない。本当にリタイヤしてしまって良いのか?
 展望台まで残り1km程度、歩き続けながらしばらく葛藤です。
 せめて母の故郷・和佐父まで進むべきではないのか?
 しかし吐いてしまったら治るまでが大変。そこから体調が戻るまで何時間掛かるのか?
 続行の考え3割、リタイヤの考え7割といった具合に進んで行きます。
 そしてようやく蘇武岳展望台に到着。ここで39.5kmです。

 普段のマラニックなら問題のない距離です。それがなぜ大会本番では吐き気に襲われるのか? この時、猛烈に自分に怒りを感じていました(苦笑)
 蘇武のエイドですが何も手をつけられず。せっかく巻き寿司が提供されているというのに食べる気になりません。なんとか水分だけは補給しましたが、気持ち悪くなったので展望台に設置されたベンチに腰をかけてしばらく休みます。
 このエイドで5分ほど滞在していたと思います。座ってずっと深呼吸をしていました。
 今から思うともっと休憩しておけば良かったです。吐き気がマシになるまで30分でも1時間でも休むべきでしたね。それから無理矢理で良いから給食も摂るべきでしたね。吐き気の正体は分かりませんが、何か胃の中に入れることによって復活もあったかもしれないのに。
 そういう判断が出来ない時点で冷静さを欠いていたんでしょうね。
「せめて40kmは超えよう」
 そう思ってエイドを出発してしまいました。もう本当に馬鹿だ。
 当たり前ですが吐き気はおさまらず、気持ち悪さを抱えたまま歩き続けました。
 蘇武展望台から次のエイド蘇武神鍋口までは5km程。その行程を歩きながら考えていたことは「もうウルトラはやめよう」ということばかり。完全なるマイナス思考。
「来年の奥熊野も出んでええわ。ボラで参加しようか」
 そんな来年の予定まで考えていました(苦笑)
 という訳でとぼとぼと歩き続けて44km地点のエイドに到着。
 迷うことなくスタッフの方に「すいません、リタイヤします」と宣言。
 こうして私の第28回村岡ダブルフルウルトラランニングは幕を閉じたのでした……。


 まぁ、レースはこれで終了でしたが、その後は楽しかったです。
 送迎の車が車でエイドで待機していたのですが、その間にスタッフとしてコース上を走っていたまゆちゃんに追いつかれます。
「まだ元気そうやのに~」と声を掛けられましたが、確かに元気だったかも。吐き気だけが苦しくて、脚はまだ大丈夫でしたからね。
 そして市原付近でお会いしたひろしげさんにも追いつかれる。
「何してんすか。まだ大丈夫でしょ。走りましょうよ」
 そう檄を飛ばされましたが完全に心は折れていたので「あきませんわ」と拒否(苦笑)

 ひろしげさんはまだまだ元気そうで、エイドで提供されていた「水茶漬け」を美味しそうに頬張っていました。この姿を見て、ひろしげさんは完走すると確信しましたね(笑)
 その後、ひでやんさんにも追いつかれます。スタート前にお会いしてから数時間ぶりの再会。ひでやんさんも美味しそうに水茶漬けを食べていましたので、これはもう完走間違いなしだと思いました(笑)

 そしてNさんにも追いつかれ、迎えに来た車の中で待っているとキャマさんにも発見される始末(笑) 情けない姿を皆様にはお見せすることになりました。とは言え、ラン友さん達にお会いすることが出来て嬉しかったです。

 その後、送迎車は蘇武展望台のエイドまで引き返し、そこでゴール地点の村岡小学校前まで送ってくれるバスに乗り込んだのですが、そこで何とひできちさんとも再会!!
 ひできちさんも調子が悪かったようで、途中で「もういいや」と心が折れてリタイヤしたとのことでした。いやぁ~、ひできちさんがリタイヤとは珍しい……。その事態に衝撃を受けましたが、バスの中に知り合いがいたのは何となく心強かったです(苦笑)
 そしてバスの中で隣に座った女性ランナーと「いやぁ~、村岡って難しいですねぇ」なんてことを喋っていたら村岡小学校に到着。そしてバスから降りると背後から「ほんま、よう喋る男やで」と声を掛けられたので振り返ってみると……

 げええええーーーー!!! だいすきとっぷ兄貴ィ!!!

 とっぷさんも蘇武でリタイヤしたようです。いやぁ、リタイヤ仲間がたくさんいて嬉しいですよ(笑)
 そんなことんなでリタイヤ後も楽しいひと時を過ごせましたね。楽しく会話をしていたおかげで心なしか、吐き気もだいぶおさまったような……。
 そんな状態なら、やはり蘇武のエイドで長時間休憩を取るべきでしたね。それこそ関門時間ぎりぎりまで休んでも良かったかも……。まぁ、そう考えても後の祭りですね。

 その後、体育館に戻って身体を濡れタオルで拭き、着替えて少し寝転びます。
 そして15分くらい眠っていたと思います。目覚めてから、まだトシさんもNさんも戻ってこないことは分かっていましたが、暇で仕方がないのでゴール地点に向かいます。
 そこでふらふらしていたら……

 オーマイガッ! もりもりサラダさんやないですかーーーーー!!!

 という訳で密かに51km部門に出ていたもりサラさんと会うことが出来ました!!
 これは驚きでしたね。いや、村岡に出ているなんて全然知りませんでしたよ。これが今回の大会で一番の驚きだったかもしれません(笑)
 その後、しばらくもりサラさんと色々と会話をしました。丹後でもお話ししましたが、そんなに深くお喋り出来なかったので、今回は時間が許すまでお話できて嬉しかったです。

 そんな具合にリタイヤを決めてから立て続けにラン友さん達に会えて心が救われました。もしリタイヤ後、誰にも会えずにバスの中で黙りこくって会場に到着していたとしたら、孤独感に苛まれて泣き崩れていたかもしれません(笑)
 いやぁ~、ラン友って本当に良いもんですねぇ~。by水野パル郎

 その後、トシさん、ひろしげさん、Nさん、ひでやんさんのゴールを見届け、帰る間際にはキャマさん、さめけんさんにもお会いすることが出来、もはや思い残すことない村岡ダブルフルとなったのでした(いや、リタイヤが思い残したことやろ!)


 といった具合に私の村岡ダブルフルは幕を閉じたのですが、なんか終盤はひたすらラン友さん達の名前を書き連ねていただけのような気がしますね(笑)

 それはさて置き、結果としては88kmの半分44kmでリタイヤ。
 う~む、情けない限り。前述しましたが、やはり吐き気に対してもう少し冷静に対処していればもっと進めたと思います。しかし対処できなかったことも踏まえて、やはりリタイヤは自分の実力不足。走力も精神力も弱かったと思います。また鍛え直し、自信を持ってウルトラに再挑戦出来るよう頑張ります。

※写真は蘇武岳展望台からの眺めです。


 以上、村岡ダブルフルの備忘録でした。

 村岡でお会いした全ての人々に感謝。
 そして当ブログを読んで下さった皆様にも感謝です。
 ありがとうございました。

コメント

  1. おいらもマラソン大会のときにゲゲゲになるんですけど、吐き気を催したときに対抗できる人間なんているんでしょうか??
    もう吐き気に抗うことは人間には無理なんじゃないかなと思うんですよねぇ。
    心が折れてしまうのは仕方ないと思うんです。
    でも、リタイヤされてから回復が早くてなによりでございます。
    次、いきまっしょい、次!!

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