第25回 奥熊野いだ天ウルトラマラソン

 ~ウルトラはゲゲゲとの闘い~
 4月20日大会当日、起床時刻は午前2時半。
 宿泊先のホテルからスタート地点までバスの送迎があるのですが、そのバスの出発時刻は午前3時51分。まだ1時間以上あるので、余裕を持って出発準備を整えます。
 朝食は赤飯のおにぎり、鶏雑炊、デザートにバナナ。


 Youtubeで動画を視聴しながら朝食を摂り、洗顔を済ませて走る格好に着替え、スタート地点で預ける荷物を確認していたら出発時間が近づいてきました。
 という訳で部屋を出ようとしたのですが、その前に「酔い止めの薬」を服用。
 バス酔い防止の為ではなく、ゲゲゲ対策です。
 以前から苦しんでいるゲゲゲ(吐き気)。漢方胃腸薬やらガスター10系の薬を試してきましたが、あまり効果なし。そこで「吐き気は走っている時に揺れて酔うから」という説を信じ、酔い止め薬を服用した訳です。これが吉と出るか凶と出るかは走ってみないと分かりません。
 今考えると、レース本番ではなくロング走をする際に試してみれば良かったのかも……。
 さてさて、バスに乗る際に同じホテルに宿泊していた66歳の御姉様と談笑。この方、なんと過去7回完走! 後3回で韋駄天の称号を獲得できます。
「もう腰を痛めてるし膝も痛めてるし大変」といったことを話していましたが、毎回「歩くべき所は歩いて走るべき所は走る」という作戦で完走しているとのこと。当然と言えば当然ですが「なるほど~」と納得せざるをえません。この当然のことが難しいですからねぇ。
 そんな御姉様と楽しい会話をしながらバスに乗っていると、あっという間に目的地に到着。ここでは荷物を預け、準備を整えたらスタート地点の那智の滝大社まで移動します。


 時刻は午前4時半過ぎ。まだ陽は上がっておらず、周囲は薄っすら暗い夜模様。そんな中、ライトアップされた那智の滝が荘厳な姿でランナー達を出迎えてくれます。
 那智の滝大社の鳥居を潜り、石段を下りて社前に到着すると早速ラン友さんと遭遇。
 室堂のうーやんさんとその奥様ではあ~りませんか!
 コロナ前と比べると、すっかり知り合いが減った本大会。その為、数少ないラン友さんと再会できると嬉しいものです。
 うーやんさんに挨拶し、それから護摩木を焚いてから再び合流。


 熊野太鼓の演奏を拝聴しながら談笑していると、しんきっつぁんと再会したり、66歳の御姉様とまたまたお会い出来たりして、楽しい時間を過ごすことが出来ました。いやぁ、大会前の緊張感に加えて、皆でわいわいする、このお祭り的な感じの雰囲気が好きだなぁ。
 さて、いよいよスタート時刻が迫って来ました。開会式で去年韋駄天の称号を得たランナーさん達からの挨拶を受け、気合いが入って来ましたよ。
 そしてカウントダウン。
 主催の関さんの「スタート!」の掛け声の下、ランナーが石段を登って行きます。石段は境内の中なので歩いて進みます。そして鳥居を潜りぬけた瞬間、ランナーが一斉に走り出します。


 さぁ、ここからがレース本番です。
 まずはいきなりの下り坂を数百mだけ進み、折り返して那智の民宿街を抜けて上り坂を進んで行きます。ここから上りが長いんですよねぇ……。
 上り坂を進んでいくと陽が昇って来て、周りの景色がくっきりと目視できるようになってきました。残念ながら曇り空なので日の出は見えませんが、太平洋が眼前に広がる素晴らしい眺望を拝むことができました。


 そしてまず最初のエイド、4.7km地点の見晴台に到着。ここで早速仮設トイレに入り、プープ(大便)を済ませます。ホテルでは早朝過ぎて出ませんわね。これでお腹もスッキリ。便意に襲われる心配もないので快調に走って行きます。
 どんどん上り坂を進んで行き、10km地点の那智高原エイドに到着。


 ここでバナナと水を頂いて出発。ここから下り坂が続きます。
 ここまで上りということもあり、ペースはキロ6分半程。下りはペースを抑えようと思いつつも、やはりスピードが出ちゃいますよねぇ。キロ4分前半のペースでどんどん進んで行きます。まぁ、まだ抑えられている方じゃないですかね。キロ3分台でアホみたいに突っ込んでいる時期もありましたから。あの頃は若かった(笑)


 そして13.9km地点の南平野三差路エイドに到着。ここで水を頂いたのですが、一口飲んで後は地面へ。う~む、なんか受け付けない。この時点でゲゲゲの予兆が現れます。早過ぎるやろ……。
 早朝なのでまだ身体が目覚めてないだけ。調子はこれから良くなってくる。
 そう思いこんで進みます。しばらく山越えのコースを走りますが、このコースは木陰の中を走ることになり、山好きの自分にとっては凄くお気に入りのコースです。ただ今回はもうしんどい(苦笑) そして15km地点で猛烈な吐き気。
「無視無視無視無視……」と念仏のように唱えながら進んで行くと幾分吐き気も収まって来たようで、少しペースダウンしつつも進んで行けました。


 そして18.5km地点の新停車場線エイドに到着。ここでは水は避けまして、スポドリを頂きましたが、これまた一口だけ飲んで後は地面に……。駄目だ、まずく感じる。エネルギーを少しだけでも摂取しようと思い、チョコの欠片だけもらい、舐めながら進みました。
 チョコの効果が出たのか、少し元気になって進んで行きます。エイドを越えたら下り坂が続くので、重力に従って力を入れずに下って行きます。
 やがて木陰のコースを終え、視界が広がり、山間部の集落に到着。
 少し歩きを入れつつ進んで行き、21.7km地点の井鹿会館エイドに到着。


 水分は見るだけで「おえっ!」と来るので、ここのメイドの名物冷奴を頂きます。これは美味い。豆腐には水分も含まれているので補給食として最高じゃないですかね。豆腐を食べた後はイチゴも頂きました。イチゴも問題なく食べられたので、水&スポドリがきつい状態。う~む、脱水の怖れあり……。
 それでも「無視無視無視無視」と呟きながら進んで行き、24.2km地点のゴルフ練習場エイドに到着。ここでは搾り立てオレンジジュースと和歌山名物・目はり寿司が頂けます。ここでオレンジジュースを頂きましたが、ちょっときつい。


 ただ水分は入れとかないと駄目なので飲み干しました。吐き気無かったら美味しく頂けたのになぁ……。そして目はり寿司は遠慮しました。
 エイドを出発し、とぼとぼ歩きを入れたりしながらも進んで行きます。
 もうこの時点で「もう止めた方が良いかも」と弱気になっていました。
 敗北確定モードで進んで行く中、ここで自販機を発見!!
 万が一の為に小銭を携帯していたので、急いで自販機へ。ミルクティーを探します。
 なぜミルクティーかと言いますと、普段のロング走やマラニックでよく水分補給として自販機で購入するのがミルクティー。加えて去年の丹後ウルトラで、ランナーの雄オーシャン殿が「もう途中からミルクティーしか受け付けなかった」と仰っていたことも思い出し、藁をもすがる気持ちでミルクティーに賭けたのでした。
 そして肝心のミルクティーですが……
「全部売り切れやんけ!!!」
 ジーザス、神は死んだ!
 奥熊野の神々に嫌われてるのか、俺は? しかしここで諦める訳にはいきません。ミルクティーに似たもの……という訳で購入したのはカフェオレ!!
 コーヒーは苦手ですが、カフェオレなら飲めます。ミルクコーヒーなら尚良し。
 そしてカフェオレを一口含むと……
「う、美味い……」
 問題なく喉を通って行きます。一気にごくごく飲んでフィニッシュ!!
 いやぁ~、助かった。水分を補給できたおかげか、吐き気が解消。これでいける!
 という訳でランを再開。どんどん進んで次のエイド、26.9km地点の中里会館へ。


 ここでも水&スポドリは避けまして、塩を振った甘夏だけ頂きました。この甘夏が最高に美味しかった~。全エイドで一番美味しいと感じたかも。
 元気が出ていたのでエイドスタッフの方々とも談笑。
「これはもうもろたで!」とまだ30kmにも達していないのに、本気でそう思いました(笑)
 そして次のエイドに向かって走る中、また自販機を発見するものの「確かまだ先にあった筈」と思ってスルー。後から考えたらこの判断は間違いだったかも。
 山間部ならではの長閑な景色を楽しみながら進んで行きますが、再び気持ちが悪くなってきます。やはり脱水か? 確かにカフェオレで復活できたと言っても、缶一本分の水分しか補給出来ていいない訳で、あそこで2本飲むか、次の自販機を見つけた時点で購入していたら良かったのかもしれません。
 後悔先に立たず、とぼとぼ進みながら29.3km地点の長井集会所エイドに到着。


 ここに荷物を預けていたので受け取りまして、中から甘酒を取り出します。
「飲む点滴」と評される程の甘酒。ここで摂取しておけば復活できるかも。


 そう思って一口飲むと……「おえっ」と吐き気が。甘酒、好きなんですよ。でも受け付けない。ただ水やスポドリ程ではない。なのでもう一口、もう二口と頑張って補給。無理して飲みましたが、これはこれで良かったのかも。水分を補給出来たおかげで少し元気になれました。ただここのエイドでは何も取らず。甘酒のみで出発。
 かなりペースが落ちているものの、ジョグで進んで行きます。


 そして31.5km地点の出合橋エイドに到着。ここでスタッフの中にうーやんさんの奥さんがいらっしゃったので檄を飛ばしてもらいます(笑) このエイドは再び戻って来ることになるので「また戻ってきてよ~」と励ましてもらいますが、もう弱気になっていたので「ショートカットするかも」と返事をしました(苦笑) いやぁ、情けない。
 そしてコーラを頂きまして出発。
 ぼちぼちとスローペースで進みまして、人気のない藪の手前でしゃがみこみ、今大会初のゲゲゲ。実は先ほどのエイドでコーラを飲んだ時から猛烈な吐き気に襲われていたのでした。あかん、コーラも駄目だわ……。
 ただゲゲゲしたおかげで気分もすっきり。歩きながら進んで行きます。


 すると吐いていた姿を見ていたというダンディなランナーさんに声を掛けてもらう。
「もう無理はせんと、気持ちを切り替えて大会を楽しんだ方が良い」
 な、なんて冷静かつ的確な助言なんだ!
 聞けば御年71歳のベテランランナーさん。全然見えない! 若々しい……。
 この御仁、もう15回この大会に出場しているとのこと。でも完走は5回。この御仁もまたレース中は身体の異変に襲われてリタイヤやショートカットすることが多いそうですが、そうなった時はいつも気持ちを切り替えているとのこと。
「完走だけが全てじゃないからね」
 ベテランランナーさんのこの言葉にかなり救われた気がします。
「では無理せず、ぼちぼち頑張って。俺も頑張るから」
 そう言って颯爽と掛けていくランナーさんの後ろ姿がカッコよすぎました。
 という訳で焦らずに走ったり歩いたりを繰り返し進んで行き、何となく後ろを振り返って見ると……何やら見たことのあるランナーさんが。

 げえええぇぇーーーー!! しんきっつぁんやないですか!!!
 何か援軍が駆けつけてくれた感じです(笑)
 しんきっつぁんとはゲゲゲ仲間なので、会えるだけで嬉しい存在。ここからはしんきっつぁんと、その連れのランナーさんと一緒に談笑しながら歩いたり、走ったりしながら進んで行きました。この区間は非常に楽に感じて助かりました。
 そして西中野川トンネルを抜けて35.2km地点のエイドに到着。


 しんきっつぁん達との談笑ジョギングのおかげでかなり元気になっており、ここで何も考えずに水を受け取って一口飲んでしまう。
「おえっ」
 再び猛烈な吐き気に襲われる。水を飲んで一瞬の出来事でした。
 という訳で残りの水は全部捨て、補給食として置かれていたポテチを一枚だけポリポリと頂きまして、再びしんきっつぁん達と進んで行きます。
 ただ気持ち悪さが再発しているので、しんきっつぁん達には先に行ってもらうことに。


 ここからは歩きが大半。深呼吸をしたり、熊瀬川沿いの景色を眺めたりしながら何とか気持ちを整えて進んで行きました。
 やがて39.5km地点の熊瀬川エイドに到着。ここでは茶粥を頂けますが、手に取る元気も無くて椅子に坐り込み、ただひたすら休憩。ここで色々と葛藤。


 残り約60kmを吐き気と闘いながら進めることが出来るのか?
 復活もあるかもしれないので粘って進むか?
 歩きが多くなってきているので関門に間に合うだろうか?
 そんなことを考えて長い間休んでいましたが、吐き気は収まらず。
 そこで心が折れる音が聞こえた気がしました。
「すいません、リタイヤします」
 そう告げた瞬間、気持ちが楽になりました。

 第25回 奥熊野いだ天ウルトラマラソン
 ……39.5kmで棄権

 いやぁ~、そこからは早いもので車に乗せてもらい、スタッフの方々とお話をさせてもらっていたら吐き気も弱まり、ゴール地点の捕陀洛寺に到着。更衣室で着替えている間、同じようにリタイヤしたランナーさんと談笑していたら吐き気も収まりました。
 そしてスタッフの方々の計らいにより、温かいおうどんが提供されました。


 このうどん、過去9回出場して初めて食べます。
 毎回ゴール後はゲゲゲ状態なので食べることが出来なかったんですよねぇ(笑)
 だから今回初めてのおうどん。まずは出汁を一口。
 う、美味い……。
 その後はぞろぞ~ろとうどんを啜り、一気に完食!
 美味しかった……。自分にとって忘れがたい味となりました。
 これを食べられただけでもリタイヤした甲斐があったものです(笑)

 という訳で今年の奥熊野いだ天ウルトラマラソンは以上となります。
 坐骨神経痛で苦しんでいた去年と比べたら、体調は万全だったのですが、まさか去年よりも短い距離でリタイヤするとは……。
 いやぁ~、レースって本当に難しいものですね。by水野パル郎
 ちなみに去年の備忘録を読み返してみると、何とほぼ同じレース展開でした(苦笑)
 去年も序盤から気持ち悪くなっていましたね。う~む、成長していない。
 この吐き気、一体何が原因なのやら?
 振り返ってみると、朝食後に飲んだ「酔い止め」が悪かったかも……。普段していない事を大会本番にするもんじゃない。そうでなくても早朝2時半起床というだけで普段通りではない訳です。普段寝ている時間帯に起き、普段服用していない薬を飲む。何かこれだけで既に体に悪い気がしますね(苦笑)
 後は脱水がゲゲゲの要因だったかも? 天気は曇りだったのですが、気温は少し高め。今から思えば汗も結構かいていたかも。だからこそ水分補給に対してもっと取り組むべきだったかもしれませんね。
 まぁ、その点に関して、通院している整骨院の先生に相談したところ色々教えてもらえたので、また対策を練りたいと思います。今はただ反省するのみ……。


 以上、奥熊野いだ天ウルトラマラソンの備忘録でしたが、いかがだったでしょうか。
 次回はレース後、新宮市内を少し観光してきたので、その模様でもブログに記そうかと思います。
 ではまた次回の更新でお会いしましょう~。

コメント

  1. パルさん、お疲れ様でした。またもゲゲゲですか。
    練習であれだけ走れているのに、本当に不思議ですね。
    来年のいだ天に向けて頑張りましょう!

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    1. うーやんさん、お疲れ様でした!!
      いやぁ〜、一体何なんでしょうね。もはやウルトラの神に見放されたとしか言いようが無いです(笑)
      リタイヤした時は「もうウルトラは引退」なんて思ってましたが、このままでは終われませんね。
      来年に向けて頑張ります!!

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  2. いだ天お疲れ様でした!水で吐き気は全く同じ状況ですね。水・お茶とダメなら白湯が良いのですがない場合が多いかもしれません。僕もミルクティーでなんとか繋いでいた部分もあります。
    ゲゲゲが発動してしまうと「無視無視無視無視……」を繰り返しても結局「無駄無駄無駄無駄……」が勝ってきてきますよね笑
    「酔い止め」は真似っこしてみようかと思いましたが、止めておくことにします笑
    また機会があればゲゲゲ対策を一緒に考えましょう~!

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    1. KATSUさん、酔い止めの薬はあきまへんわ〜(笑)!
      いやぁ~、KATSUさんの水都のブログを読んで、自分もどうせ吐くなら好きなものをガブガブ飲んでやったら良かったと反省し切りです(笑)
      大会後、通っている整骨院の先生に色々相談したんですが、何か光明が見えてきた気がします!その内容に関してはまたブログで書いていこうと思いますので、また参考にして下さい!

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  3. 出合橋のメイド2025年4月27日 4:39

    パル彦さーん!名簿に名前もあるし、韋駄天練習もされてるし、口熊野の時にも韋駄天のお話したのに全然お会いしないと思ったらDNFでしたか💦 レジェンドのお言葉ありがたいですねー☺️

    曇りでも蒸し暑くて、私も前は大丈夫やったのに今回は吐き気にやられました😢 けっこう前半からのゲゲゲ、睡眠不足とか脱水もあるのかな?脱水対策もして氷入れたタオル巻いて走ったらかなり楽でしたよー!ま、私もDNFなんで参考にならない😂 また来年頑張りましょう!

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    1. メイドはーん!!
      いやぁ~、お会いしたかった……。本当に今回は不完全燃焼で終わった感があります。折り返しのカイロス、見たかったなぁ〜(笑)

      メイドさんのコメント見て思い出したんですが、前日のホテルで結構身体が火照っている感じがしたので、もしかして前日から脱水気味だったのかも……。
      走ってる時も脱水対策を怠っていました。ちょっと準備不足でしたね。反省しかない……。
      お互いまた来年に向けて頑張りましょ〜!!
      その前に口熊野も頑張らねば(笑)

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